ポリシーエンジンの設定
ポリシーエンジンこそ TeslaKee の本体です。純正のフォンキーは車が尋ねれば必ず応答します。だからこそ、犯人のひとりが車のそばに、もうひとりがあなたのそばに立つだけで、車は走り去ってしまいます。TeslaKee のキーは、あなた自身が決めたルールが「これは本人が車に近づいている状況だ」と判断したときにだけ応答します。
このページでは、ルールがどう組み合わさるのか、各ルールが実際に何を測っているのか、そしてどの組み合わせが日常で使えるのかを説明します。すべて Android アプリの ポリシー 画面にあります。
判定のしくみ
車が認証を求めるたびに、エンジンは設定されたルールを評価し、許可かブロックのどちらか一つの答えを出します。
パッシブエントリーが許可されるのは次の場合です。
すべての必須ルールを満たし、かつ 任意ルールを N 個以上満たす(N は設定した定足数)。
任意ルールが一つも設定されていなければ定足数は無視されます。ルールが一つも設定されていなければエンジンはブロックします。空のポリシーは「開けっ放しの扉」ではありません。
いくつかの要素はこの評価の外側にあり、次の順で先に確認されます。
- キルスイッチ — 常にすべてをブロック。キルスイッチを参照。
- 再接続の猶予 — 認証済みのリンクが一瞬切れても認証は維持。接続の維持を参照。
- 接続の維持 — 一度その接続中に許可されたら、接続が切れるまで許可のまま。
- 手動オーバーライド — 数分間すべてを許可。手動オーバーライドを参照。
- Always-On — 恒久的にすべてを許可。Always-Onを参照。
ルールはコストの低いものから評価され、結果が判定を左右しなくなったルールは省略されます。これはバッテリー最適化にすぎず、許可/ブロックの答えは全ルールを評価した場合と同じです。
必須・任意・オフ
各ルールには3つのレベルのいずれかが割り当てられます。ここが理解しておく価値のある仕組みです。安全性と快適さの折り合いは、まさにここで決まります。
| レベル | 意味 | 満たせなかった場合 |
|---|---|---|
| 必須 | 絶対条件。 | 他が何を満たしていても車は開かない。 |
| 任意 | 定足数に数えられる根拠。 | 単独では影響なし。他の任意ルールが補える。 |
| オフ | 評価しない。 | — |
言い換えれば、必須ルールは AND、任意ルールは投票です。
- 必須 にするのは、本当に自分が車に向かっているときは常に真で、攻撃者にとっては決して真にならない条件です。動きがその典型で、端末は手の中かポケットにあり、最近動いています。
- 任意 にするのは、ときどき使えなくなる良い根拠です。屋内の GPS、ずれる気圧計、切り替わる基地局など。どれか一つが欠けただけで締め出されてはいけません。
- オフ は自分に当てはまらないものに使います。
必須なのに評価できないルール(センサーがない、権限がない、基準がない)は不成立として扱われ、その結果ブロックします。これは意図的です。測れない条件は満たされた条件ではありません。そして「アプリが車を開けてくれない」の原因として最も多いのもこれです。トラブルシューティングを参照してください。
定足数
定足数とは、満たす必要のある任意ルールの数です(「この4つのうち少なくとも2つ」)。
- 低い定足数(1)は、根拠が一つあれば十分という意味です。快適ですが弱い設定です。
- 高い定足数(任意ルールの数と同じ)は、実質的にすべてを必須にします。強力ですが脆くなります。
- 実用的なのはたいてい 3つのうち2つ か 4つのうち2つ です。攻撃者は独立した複数の条件を同時に偽装しなければならず、一方でセンサー一つの気まぐれでは締め出されません。
定足数は任意ルールにだけ適用されます。実際の任意ルール数より大きい定足数はすべてをブロックしてしまうため、アプリ側で自動的に制限されます。
セキュリティプロファイル
画面上部の3つのプロファイルは、下にあるすべてのルールとしきい値を1タップで設定します。出発点であって束縛ではありません。あとから何かを変えれば、プロファイルはカスタム表示になるだけです。
| カジュアル | バランス | 厳格 | |
|---|---|---|---|
| 動き | 任意 | 必須 | 必須 |
| BLE 信号 | オフ | 任意 | 必須 |
| 端末のロック解除 | オフ | 任意 | 必須 |
| 駐車位置 | オフ | 任意 | 任意 |
| 歩数 | オフ | オフ | 任意 |
| 高度 | オフ | オフ | 任意 |
| 定足数 | 1 | 2 | 3 |
| 動きの時間窓 | 15分 | 5分 | 2分 |
| 信号しきい値 | −90 dBm | −80 dBm | −70 dBm |
| 歩数 | 15分で5歩 | 5分で10歩 | 2分で25歩 |
| 高度の許容差 | 30 m | 15 m | 5 m |
| ロック解除から | 10分以内 | 2分以内 | 1分以内 |
ほとんどの方には バランス が適切です。厳格 は、端末を最近ロック解除していて車のすぐ近くにいることを前提とします。防御力は非常に高い一方、たまにドアハンドルを二度引くことになります。カジュアル は純正キーとほとんど変わりません。安全だと確信できる場所にしか駐めない場合に限ってお使いください。
設定をテストする
同じ画面の ポリシーテスト パネルは、オフにしたものも含めてすべてのルールをその場で評価し、現在の状態を表示します。端末に実際に搭載されている動きセンサーと、それが反応しているかどうかも一覧できます。
使い方はこうです。いつも駐車する場所に立ち、パネルを開いて、検討中のルールを読みます。自分の車の隣に立っているのにすでに不成立になるルールは、あなたを締め出すルールです。任意に下げるか、オフのままにしてください。
各ルール
動き
成立条件: 端末が動いている、または時間窓内(2 / 5 / 15分、1〜60分で調整可)に動いていたこと。
リレー攻撃対策の主力であり、既定で必須になっている唯一のルールです。リレー攻撃は、端末がテーブルの上、玄関、ベッドサイドに置かれて動いていない間に起こります。10分間まったく動いていない端末が、いま車に向かって歩いているはずがありません。
- 時間窓が短いほど強固です。2分は「たった今動いていた」を意味します。
- 時間窓が長いほど、駐車した車の近くのカフェに座っているような場合に優しくなります。
- 加速度センサーが必要で、GrapheneOS/CalyxOS では センサー 権限も必要です。権限がないとルールは常に不成立となり、すべてをブロックします。
ジオフェンス
成立条件: 端末が地図上で描いたゾーンのいずれかの中にあること。(プレミアム)
「自宅、職場、ジムの近くでだけ許可する」と指定するためのルールです。GPS 測位を必要とするため、バッテリー消費の大きい2つのルールのうちの一つであり、地下駐車場では遅いか利用できません。任意としては優秀ですが、必須にするのは危険です。地下は GPS が最も苦手な場所であり、それでもドアは開いてほしい場所だからです。
駐車位置
成立条件: 端末が、車を最後に施錠した地点から一定半径(既定50 m)内にあること。(プレミアム)
位置系ルールの中で最も切れ味が鋭く、しかも設定不要です。TeslaKee が駐車位置を記録し、その近くでしか解錠しません。あなたが自宅にいる間に車のそばに立つ攻撃者は即座に失格になり、車をレッカーで運び去った泥棒も同じです。
ジオフェンスと同様に GPS に依存し、屋内での弱さも引き継ぎます。多くの方には任意が適切なレベルです。
信頼済み Wi-Fi
成立条件: 端末が信頼済みネットワークのいずれかに接続していること。
低コストで即時、そして安定しています。ただし証明できるのは自宅や職場にいることであって、車のそばにいることではありません。定足数の一票としては優秀です。「自宅ネットワークに接続していてかつ最近動いた」は、どちらか単独よりはるかに強い根拠になります。車が常に Wi-Fi 圏内に駐まっている場合を除き、必須にはしないでください。
時間帯
成立条件: 現在時刻が、指定した有効時間帯に入っていること。
最も役立つのは逆の使い方、つまり夜間の遮断です。リレー窃盗の大半は夜間に起こり、その時間にあなたが運転していることはまずありません。勤務時間が不規則なら任意かオフにしておきましょう。
BLE 信号強度
成立条件: 車両の電波が設定したしきい値以上であること(−70 / −80 / −90 dBm、−100〜−40 で調整可)。
中継された信号は再送信されるため、本物より弱く届くことが多く、逆に本当に近づいていれば最後の数メートルで着実に強くなります。しきい値を設けると、「車が私の声を拾える」が「車が近くから私の声を拾える」に変わります。
- −70 dBm ≈ 車のすぐ横。強力ですが、端末を後ろポケットに入れているとまれに二度目の試行が必要になります。
- −80 dBm ≈ 数メートル離れた位置。既定値であり、ちょうどよい妥協点です。
- −90 dBm ≈ 駐車場のどこか。
一度ルールが成立すると、しきい値より 8 dB 下回るまでは不成立に戻りません。このヒステリシスにより、歩み寄る間に判定がばたつくのを防ぎます。
歩数
成立条件: 直近 M 分間に歩数計が N 歩以上を記録していること(プリセットは5/15、10/5、25/2)。
単なる動きより強い根拠です。走行中の電車や振動する机の上の端末は動きを記録しますが、歩数は記録しません。これは文字どおり「人がこの端末をここまで運んできた」証拠です。歩数センサーと、Android では 身体活動 権限が必要です。必須にする前に必ずポリシーテストで確認してください。歩数の反映が1分以上遅れる端末もあります。
高度
成立条件: 気圧高度が、最後の施錠時に記録した高度から許容差(5 / 15 / 30 m)以内にあること。
階をまたいだ攻撃を見破るルールです。車は地下駐車場、あなたは14階。基地局も Wi-Fi も、GPS でさえ「自宅にいる」と言いますが、気圧だけは同意しません。
気圧計が必要で(中価格帯の端末には無いものも多く、その場合はアプリが知らせます)、駐車位置の基準も必要です。気圧は天候で数時間かけて変化するため、許容差を極端に狭くすると一晩でずれることがあります。15 m がちょうどよい妥協点で、任意のままにしておくのがおすすめです。
端末のロック解除
成立条件: 画面をたった今ロック解除した、または直近 N 分以内に解除したこと(1 / 2 / 10分、0 = 「今ロックが解除されていること」)。
非常に強い根拠です。リレー攻撃はポケットの中の端末に対して成立しますが、泥棒があなたにロック解除させることはできません。代償として、ドアハンドルより先に端末に触れる必要があります。多くの人はどのみちそうしています。
毎回必ず端末を取り出す覚悟があるときだけ 0 に設定してください。
基地局
成立条件: 端末が、許可リストに追加した基地局 ID のいずれかを現在検出していること。
「自分は正しい地区にいるか」を見るルールで、GPS のような電力消費がなく、屋内でもはるかによく届きます。リストは駐車場所に立った状態で 現在のものを追加 で作ります。性質上おおまかで(1つの基地局が広い範囲をカバーします)、近接の証明ではなく補助的な一票と考えてください。
駐車位置の基地局
成立条件: 現在見えている基地局のうち少なくとも1つが、最後の施錠時にも見えていたこと。
駐車位置ルールと同じ発想を、GPS ではなく携帯電話網で行います。地下でも機能し、設定は不要で、駐車のたびに基準を取り直します。スナップショットには通常、接続中の基地局と近隣の基地局が複数含まれるため、ハンドオーバーにも耐えます。非常に優れた任意ルールであり、地下駐車場を使う方にとってはおそらく最も費用対効果の高い一つです。
オーバーライドと安全弁
手動オーバーライド
すべてのルールを無視して、指定した分数だけ(既定5分、最大120分)入室を許可します。ポリシーが一般には正しくても、いまこの瞬間だけは邪魔になる場面のためにあります。車を人に預けるとき、端末を車内に置いたままトランクに荷物を積むとき、センサーが明らかにおかしいとき。
ホーム画面から開始します。自動的に期限切れになる点が肝心です。
Always-On
ポリシーエンジン全体を無効にします。キーは純正と同じ振る舞いになり、つまりリレー攻撃が再び成立します。アプリは確認を求め、有効な間はずっと赤い警告を表示し続けます。
正当な用途が一つあります。問題の原因がそもそもポリシーにあるのかを切り分けることです。オンにして車が開くか確認し、すぐオフに戻してください。
キルスイッチ
正反対の極であり、オーバーライドや Always-On を含むすべてに優先します。キルスイッチが有効な間、TeslaKee はスキャンせず、車にも応答せず、車両から見ればアンインストール済みのアプリと区別がつきません。端末を人に渡すときや、長期間駐車していてその端末に BLE キーを一切置きたくないときに使います。すぐに元へ戻せます。
接続の維持と再接続の猶予
Bluetooth 接続中に一度パッシブエントリーが許可されたら、その接続が終わるまで許可のままになります。これがないと、瞬間的な落ち込み(信号の谷、センサー読み取りの取りこぼし)によって、車内に座っている最中に認証が取り消されかねません。
再接続の猶予(既定60秒、設定で0〜600秒)は、同じ考え方を短時間の切断に広げます。認証済みのリンクが切れ、猶予時間内に戻ってきた場合、すべてのルールをやり直さずに認証を維持します。再接続のたびにポリシー全体を通したい場合は 0 に設定してください。
実際に使える設定例
日常・自宅ガレージ — 動きを必須 · 定足数2(駐車位置の基地局、端末のロック解除、BLE 信号)。地下でも機能し、気圧計がなくても成立し、端末がキッチンのテーブルにある間は応答しません。
市街地の路上駐車 — 動きを必須、BLE 信号を必須(−80)· 定足数2(歩数、端末のロック解除、駐車位置)。近接が本物であることを求め、人が移動した証拠も求めます。
最大限のセキュリティ — 動き、BLE 信号(−70)、端末のロック解除をすべて必須 · 定足数3(歩数、駐車位置、高度、駐車位置の基地局)。ときどきハンドルを二度引くことになる前提で。車側の運転用 PIN と併用してください。
地下駐車場のある集合住宅 — 動きを必須 · 定足数2(高度、駐車位置の基地局、端末のロック解除)。ここで本当に効いているのは高度です。「ガレージで車の隣にいる」と「14階で眠っている」を切り分けます。
車が開かないとき
まず ポリシーテスト を開いてください。不成立のルールが名指しされ、ほぼ常にそれが答えです。よくある原因は次のとおりです。
- 必須ルールが測定できない。 気圧計がない、歩数センサーがない、センサー権限が拒否されている、駐車位置の基準がまだない、地下で GPS が取れない。測れないものは不成立として扱われます。そのルールを任意に下げてください。
- 屋内で示せる根拠より定足数が高い。 1つ下げるか、コストの低い任意ルール(信頼済み Wi-Fi、駐車位置の基地局)を1つ追加してください。
- BLE しきい値が高すぎる。 金属の多い車体に対し、端末を後ろポケットに入れた状態での −70 dBm はかなり厳しい設定です。−80 を試してください。
- 動きの時間窓が短すぎる。 レストランで1時間座ったあとでは、2分の時間窓は立ち上がって歩き出すまで動きを検出しません。
- 純正 Tesla アプリがまだ Bluetooth キーのまま。 その場合、車は TeslaKee ではなくそちらと通信している可能性があり、ポリシーは一切適用されません。Tesla アプリの手順を参照してください。
- まったく何も起きない。 キルスイッチがオフであることを確認し、設定 → バックグラウンドの信頼性 を確認してください。
それでも解決しない場合は、ポリシーテストのパネルのスクリーンショットを添えて contact@toothr.com までご連絡ください。たいていは一目で答えが分かります。